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X線管とは?

X線検査装置の心臓部である「X線管」。本記事ではX線管の役割や構造、そして「密閉管」と「開放管」という主要な種類ごとの特徴までを分かりやすく紹介します。

X線を人工的に作り出す真空管

X線管は、非破壊検査や医療診断に用いられるX線装置の中で、X線を人工的に発生させる役割を担う最も重要な部品です。その実体は、内部が高度な真空状態に保たれた「真空管」の一種であり、これがなければX線検査は成り立ちません。

X線管の役割と構造の概要

X線管の最も重要な役割は、目に見えないX線を安定的に、そして意図した強さで作り出すことです。この役割を果たすため、X線管は非常に精密な構造をしています。その基本構造は、電子を放出する「陰極(フィラメント)」と、その電子が衝突する的となる「陽極(ターゲット)」という二つの主要な電極から成り立っています。これら一式が、ガラスやセラミック製の真空容器内に封じ込められているのが特徴です。X線管は、いわばX線検査装置の性能を決定づけるエンジン部分であり、その品質が検査画像の鮮明さや信頼性に直結するといえるでしょう。

X線は「電子の衝突」によって発生する

X線管がX線を発生させる根源的な原理は、非常にシンプルな物理現象に基づいています。それは「高速で運動する電子が物質に衝突した際に発生する」というものです。具体的には、X線管の内部で作り出された電子の流れを、金属のターゲットに猛烈な速度でぶつけます。この時、電子が持っていた運動エネルギーの一部が、X線という非常に波長の短い電磁波に変換されるのです。この現象は1895年にレントゲン博士によって発見されました。現在のX線管は、この物理現象を工業製品として極めて高い精度で、かつ安全に再現するための工夫が凝らされた精密デバイスであるといえます。

X線管の基本原理と構造

X線発生の仕組み

X線の発生は、大きく分けて3つのステップで進行します。まず最初のステップは、陰極に存在するフィラメントという金属線を電流で加熱し、そこから多量の「熱電子」を放出させることです。次に、放出された熱電子を陽極に向かって加速させます。陰極と陽極の間には数万ボルト以上の非常に高い電圧がかけられており、この強力な電界によって電子は陽極のターゲットめがけて超高速で引き寄せられる仕組みです。最終ステップとして、光速近くまで加速された電子が陽極のターゲットに激しく衝突します。この衝撃で電子は急激に減速し、その運動エネルギーが熱とX線に変換されて放射されるのが特徴です。このとき発生するX線には、電子の制動によって生じる「制動X線」と、ターゲットの原子構造に由来する「特性X線」の二種類が存在します。

X線管の主要な構成要素

X線管を構成する部品の中でも特に重要なのが、陰極、陽極、そしてそれらを収める真空容器です。電子を発生させる源となるのが「陰極」で、内部にはタングステンなどで作られたフィラメントが設置されています。そして、加速した電子の衝突対象となるのが「陽極」です。陽極には、電子の膨大なエネルギーを受け止めるため、融点が高く熱伝導性に優れたタングステンなどの金属が用いられます。これら陰極と陽極は、電子の走行を妨げる空気分子が存在しないよう、内部が高真空に保たれた容器の中に配置されなければなりません。この容器は主にガラスや金属セラミックで作られており、内部の真空度を長期間維持する重要な役割を担っています。

X線管の主な種類|「密閉管」と「開放管」の違い

密閉管(クローズドチューブ)の特徴

密閉管方式のX線管は、製造段階で管の内部を真空状態にして完全に封じ切った構造を持っています。イメージとしては、家庭で使われる白熱電球に近いといえるでしょう。この方式の最大のメリットは、使用者が真空状態を維持するためのポンプなどを必要とせず、メンテナンスフリーで手軽に扱える点です。装置への組み込みも比較的容易で、安定した性能を長期間発揮することが期待できます。ただし、内部のフィラメントなどが消耗して寿命を迎えた場合は、部品交換ではなく管全体を交換する必要があります。その扱いやすさと安定性から、一般的な産業用X線CTスキャン装置や医療用レントゲン装置などで広く採用されている方式です。

開放管(オープンチューブ)の特徴

開放管方式のX線管は、密閉管とは対照的に、常に外部の真空ポンプで内部の真空状態を維持し続ける仕組みです。この方式の最大の利点は、その優れたメンテナンス性にあります。管の内部にあるフィラメントやターゲットといった消耗品が劣化した際に、ユーザー自身やサービスエンジニアがそれらの部品だけを交換できるのです。これにより、管本体は半永久的に使用し続けることが可能となり、長期的な視点で見るとランニングコストを抑えられる場合があります。また、原理的に電子の焦点を非常に小さく絞りやすいため、より高精細・高解像度な検査が求められる研究開発や、半導体・電子部品の詳細な非破壊検査といった用途でその真価を発揮します。

密閉管と開放管のメリット・デメリット

密閉管と開放管の特性を比較すると、その違いがより明確になります。まず解像度の観点では、電子の焦点をより小さく絞りやすい開放管の方が、一般的に精密な画像を撮影する上で有利とされています。一方でメンテナンス性においては、密閉管は寿命が来るまで基本的に手がかからない反面、寿命時には管ごと交換が必要です。

対する開放管は、真空ポンプの維持や定期的な部品交換という手間が発生しますが、管本体は長く使用できます。コスト面では、初期導入費用は密閉管の方が安価な傾向にありますが、開放管は消耗品の交換で運用を続けられるため、長期的なランニングコストでは有利になるケースも考えられるでしょう。これらの特性から、安定稼働を重視する生産ラインでの検査には密閉管が、最高の解像度が求められる分析や研究には開放管が選ばれる傾向にあります。

まとめ
X線管の仕組みと2つの方式を理解して最適な装置選びへ

X線管は、高速の電子をターゲットに衝突させてX線を発生させる、検査装置のまさに心臓部です。その方式には、メンテナンスフリーで安定性に優れる「密閉管」と、部品交換が可能で高解像度な検査に適した「開放管」の2種類が存在します。それぞれに明確なメリット・デメリットがあり、求める検査の精度や運用方法に応じて適切な方式を選ぶことが、X線検査を成功させる鍵となります。

まずは
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X線の基板検査装置
おすすめ3選

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引用元:アイビット公式 http://i-bit.co.jp/case_studies/01.html
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BGAのショート(ブリッジ)検査
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[選定基準]
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