食品工場に置くx線検査装置の選び方
食品の安全性を確保し、品質を維持するためには、製造工程における検査が欠かせません。工場の生産ラインや解決したい課題によって、求められるX線検査装置の機能は異なります。自社の状況を把握し、それぞれの課題に対応できる装置を選ぶことが重要です。
本記事では、代表的な課題とそれに対応するX線検査装置の選び方について解説します。
食品パッケージの目視検査を自動化したい
人手による目視検査は、作業員の確保の難しさや、ヒューマンエラーによる見逃しのリスクがあります。検査の効率化と生産性向上が求められる中で、自動化は重要な課題です。
このような課題には、ラインセンサーを搭載したX線検査装置の導入が有効です。製造ライン上を流れる製品を連続的にスキャンし、X線の透過量の違いから異常を検知します。
例えば、食品パッケージのシール部分に内容物が挟まる「噛み込み」を検出可能です。小型の装置も多く、既存の包装機ラインにも比較的容易に組み込むことができ、省スペースで検査の自動化を実現します。
中身が見えない食品パッケージの内部を検査したい
アルミ蒸着フィルムや着色されたパッケージなど、中身が目視で確認できない場合、内容物の個数不足や位置ずれ、シール部分への噛み込みといった不良を見逃す可能性があります。
この課題には、エリアセンサーを備えたX線検査装置が役立ちます。カメラのように特定の範囲を面で捉えてX線画像を生成するため、パッケージ内部の状態を詳細に検査可能です。
光学センサーやカメラでは不可能な、非透明パッケージ内の内容物の個数確認や形状検査、噛み込みの有無などを検出します。インラインでの自動検査を実現することで、品質を維持しながら効率的な生産が可能になります。
異物の検出感度を向上させたい
通常のX線検査装置は、エネルギーの高いX線を使用して物質を透過させます。しかし、エネルギーが高すぎると、微小な異物や密度の低い異物を透過してしまい、検出感度が低下することがあります。
この課題の解決には、エネルギーが比較的低い「軟X線」を使用する軟X線検査装置を選ぶことで、検出感度を高めることが可能です。軟X線は透過力は弱いものの、微細な密度の違いを捉えやすいため、薄いフィルムの噛み込みや、密度が低い異物の検出に適しています。
製品の傾きによる誤検知を減らしたい
製造ラインを流れる製品は、常に一定の姿勢で搬送されるとは限りません。製品が傾いた状態で検査装置を通過すると、撮影されたX線画像も傾いてしまい、正常な製品を不良品として判定する「誤検知」が発生する原因となります。
このような課題には、画像の傾きを補正する機能を備えたX線検査装置が有効です。この機能を持つ装置は、製品が傾いて搬送されても、内部の画像処理によって画像を正しい向きに修正してから解析を行います。
検査を高速化したい
生産効率を高めるためには、製造ラインの高速化が不可欠です。それに伴い、検査装置にもラインのスピードに対応できる高い処理能力が求められます。検査速度が遅いと、生産全体のボトルネックになってしまいます。
この場合、高速検査に対応したスペックを持つX線検査装置を選ぶことが重要です。不良品を検知した際に、エアーで自動的にラインから排除する機能を備えていると、生産ラインを止めることなく連続運転が可能です。検査から不良品の排除までを自動化することで、高速な生産ラインでも品質管理の仕組みにより安定した製品づくりを支援します。
食品に必須となる検査
食品事業者は、法律に基づいて実施が求められる検査に対応する必要があります。ここでは、代表的な2つの検査について解説します。
命令検査
食品衛生法第26条には、特定の状況下で都道府県知事が事業者に対して検査を命じることができる(命令検査)と定められています。
例えば、食中毒が発生した場合や、食品から残留農薬などが基準値を超えて検出された場合などが該当します。事業者が自社の判断で行うものではなく、行政からの命令によって実施されるものです。
注意点として、この検査は誰でも行えるわけではなく、厚生労働大臣によって定められた「登録検査機関」で実施する必要があります。命令を受けた事業者は、自社で検査設備を持っていたとしても、対応可能な登録検査機関を探し、検査を委託しなければなりません。
規格基準検査
食品衛生法第13条第1項に基づき、特定の食品については、製造における衛生上の規格基準が定められています。対象となるのは、清涼飲料水、食肉製品、冷凍食品、豆腐など多岐にわたります。
食品ごとに、細菌数や大腸菌群といった微生物に関する基準が具体的に設定されています。法律で検査の実施自体が義務付けられているわけではありませんが、事業者は製造した食品がこれらの規格基準を満たしていることを保証する責任があります。
多くの事業者は、規格違反がないことを確認・検証する目的で、自主的に一定の頻度で製品検査を行っているのです。
食品工場にX線検査装置を導入する際は、まず自社の製造ラインが抱える課題を明確にすることが重要です。
例えば、「目視検査を自動化したい」「中身が見えない製品の品質を保証したい」「より微小な異物まで検出したい」といった具体的な目的に応じて、選ぶべき装置の機能や種類は異なります。ラインセンサー型、軟X線利用型、傾き補正機能付き、高速ライン対応型など、それぞれの特徴を理解し、自社の製品や生産体制に合った装置を選定することが、品質管理の向上と生産効率化の鍵となります。また、食品衛生法で定められた検査の遵守とあわせ、自主的な品質管理レベルを高めるための設備投資として検討することが望まれます。