X線検査装置の導入に伴う届出義務と手続き
産業用X線検査装置の導入を検討する場合、安全確保と法令順守のため、「設置・移転・変更・廃止」に関して事前届出が必要です。本記事では、「なぜ届出が必要なのか」「どのような場合に義務が発生するのか」について解説します。
関連法令と届出の対象範囲
適用される主な法律・規則
産業用X線検査装置は、労働安全衛生法およびその施行省令である、電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号)に基づき、設置・移転・変更・廃止の届出が義務付けられています。
法第88条および省令第46条では、放射線の事業的取り扱いに関する基本的な指針と安全管理体制が定められており、放射線業務中の被ばく線量の限度・および管理区域の設定や測定などの義務付けが明記されています。
例えば、装置の実効束線量や遮蔽設計によっては、労働者の被ばく量に安全マージンが担保されていることの証明が必要です。法令に則った形で、広域的な安全管理体制を構築する責任があります。
届出対象と届出が不要な例
届出が必要となるのは、以下のような新設・移設・構造変更・廃止などに該当する場合です。
例えば、新型検査装置の設置や製造ラインへの組み込み、設置場所の変更、用途の変更、また廃棄による除去などすべてが対象。ただし、以下のような条件を満たす小型遮蔽型装置については、管理区域・作業主任者の義務が免除されます。
- X線漏れが装置外部で3ヶ月で1.3mSvを超えない遮蔽構造(1週あたり約100µSv)である
- 業者が装置外部にて遮蔽されており、X線照射中に人体が入らないインターロック構造
このような場合、放射線管理区域の設定やX線作業主任者の選任は不要とされています。
届出の手順
届出期限
届出義務がある場合、以下の期限を守る必要があります。
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設置主体 | 届出先 | 届出期限 |
---|---|---|
民間企業 | 所轄 労働基準監督署 | 工事開始の30日前まで |
公立機関 | 都道府県の人事委員会 | 工事開始の30日前まで |
中央省庁 | 人事院 | 設置完了・検査終了後の30日以内 |
特に民間企業では、設置工事を起こす30日前までの届け出が法令上義務付けられているため、遅延は法違反の対象となる可能性がある点に注意が必要です。
届出に必要な書類
届出には、以下の所定様式の提出が必要です。
- 「機械等 設置・移転・変更届」(様式第20号):設置場所・装置名・設置者・使用目的などを記載
- 「放射線装置摘要書」(様式第27号):装置の型式・使用線量・遮蔽性能・使用状況などを技術的に記述
- 管理区域の説明書(図面付き):X線被ばくが問題となるエリアを明示する地図・レイアウト
- 業務概要書(作業工程・装置用途・対象製品など):実際の使用部署や製品種類、運用手順などを説明
これら書類は、管轄する労働基準監督署または人事委員会へ提出が必要です。様式第20号・様式第27号の内容は技術的な記述が多く、適切に準備しないと追加修正を求められる場合もあります。
導入には「労働安全衛生法」および「電離放射線障害防止規則」をしっかり把握したうえで、計画的に届出期限と書類準備を進めることが重要です。特に、書類の不備による遅延や手続き漏れは、安全面と法令順守の信頼性に大きな影響を及ぼします。
導入を検討する場合、メーカー選定の際に届出のサポートの有無やサービスがあるか確認しましょう。