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電子部品・基板検査の精度を左右する「ボクセルサイズ」とは?

電子部品の微細化・高密度化が進む中、X線CT装置による非破壊検査の重要性は増すばかりです。高精細な画像を得るには「ボクセルサイズ」の理解が不可欠ですが、ただ小さければ良いわけではありません。 本記事では、ボクセルサイズの意味から画質への影響、検査対象に合わせた設定方法までを分かりやすく解説します。

X線CTにおけるボクセルサイズとは?

CT画像の最小単位「ボクセル」

ボクセル(Voxel)は、「Volume(体積)」と「Pixel(画素)」を組み合わせて作られた用語で、3次元空間上の最小単位として扱われる立方体(または直方体)を指します。2次元画像がピクセルの集合で構成されるのに対し、X線CTなどで得られる3次元画像は、ボクセルの集積によって立体的に表現される仕組みです。電子部品の3Dモデルを例に挙げると、形状を形作る小さな各ブロックがボクセルに該当します。そして「ボクセルサイズ」とは、この立方体の一辺の長さを意味し、値が小さいほど解像度の高い3Dデータが得られるようになります。

空間分解能やピクセルとの違い

ボクセルとしばしば混同される用語に「ピクセル」と「空間分解能」があります。まずピクセルは、2次元(平面)における画像の最小単位です。対してボクセルは、奥行きの情報を持つ3次元(立体)の最小単位という点で明確な違いがあります。次に空間分解能とは、装置が「どれだけ近接した2点を分離して認識できるか」を示す性能指標であり、主に装置のX線焦点サイズや検出器の性能に依存します。一方でボクセルサイズは、撮影時の設定によって変更できる「画像の最小単位の大きさ」を指す数値です。ボクセルサイズを小さくすれば、より高い空間分解能が期待できますが、必ずしも「ボクセルサイズ=空間分解能」となるわけではない点を理解しておく必要があります。

ボクセルサイズは何で決まる?計算方法と要因

ボクセルサイズは、装置の性能と撮影設定の組み合わせによって決定されます。具体的な計算式は「ボクセルサイズ = 検出器のピクセルピッチ ÷ 幾何学拡大率」で表されます。ここで言う「ピクセルピッチ」とは、X線検出器に並んだ画素の中心間の距離のことで、装置によって決まっている固定値です。一方、「幾何学拡大率」は撮影時に調整可能な変数であり、ボクセルサイズをコントロールする上で非常に重要な要素となります。この幾何学拡大率は、X線焦点から検査対象物(基板や電子部品など)までの距離(FOD)と、X線焦点から検出器までの距離(FDD)の比率(FDD/FOD)で決まります。つまり、検査対象物をX線焦点に近づけるほど拡大率が上がり、ボクセルサイズは小さくなるのです。

ボクセルサイズが画質と撮影条件に与える影響

メリット:微細な欠陥や構造の可視化

ボクセルサイズを小さく設定する最大のメリットは、BGA(Ball Grid Array)や半導体パッケージ内部の微細な不良を正確に可視化できる点にあります。例えば、BGAのはんだボール内部に発生した数μm(マイクロメートル)のボイド(空隙)や、ヘッドインピロー(HIP)のような接合不良、ICチップのマイクロクラックなどを鮮明に捉えることが可能です。また、多層基板における内層パターンの断線や、層間のビア(via)が正常に接続されているかといった詳細な構造解析も行えます。このように高精細な観察能力は、製品の歩留まり向上や信頼性評価に直結し、高度な品質保証体制を築く上で極めて重要な利点といえるでしょう。

デメリット:ノイズの増加、撮影時間の長期化、データ量の増大

高精細化というメリットの裏には、いくつかのデメリットが存在します。第一に、ノイズの増加です。ボクセルサイズを小さくすると、一つのボクセルが受け取るX線の情報量が減るため、信号に対するノイズの割合(S/N比)が悪化し、画像がざらついて見えてしまいます。

第二に、撮影時間の長期化です。特に量産ラインでの検査において、ノイズ低減のために露光時間を長くしたり積算枚数を増やしたりすると、タクトタイムが伸びてスループットの低下を招きます

そして第三に、データ量の増大です。基板全体を高精細に撮影すると、データサイズがギガバイト単位に達することも珍しくなく、解析や保管に高性能なPCや大容量ストレージが必要になります。

小さければ良いわけではない?画質とのトレードオフ

これまでの説明から分かるように、電子部品検査においてもボクセルサイズは単純に小さければ良いというわけではありません。理論上はボクセルサイズを小さくするほど詳細な形状を表現できますが、それに伴うノイズの増加が、かえって不良の判別を困難にさせる可能性があるからです。例えば、BGAの微小なボイドを観察したいのに、ノイズが多すぎてボイドなのかノイズなのか判断できない、という事態も起こり得ます。画像の精細さとノイズレベルはトレードオフの関係にあるのです。検査のスループットやデータ管理のコストも考慮し、検査目的を達成できる範囲で、できるだけ大きなボクセルサイズを選ぶという判断も重要になります。

最適なボクセルサイズを設定するためのポイント

検出したいサイズから逆算する考え方

最適なボクセルサイズを設定する第一歩は、「どの部品の、どんな不良を、どのくらいの大きさで観察したいのか」という目的を明確にすることです。例えば、直径50μmのBGA内部にあるボイドを確実に検出したい場合、ボクセルサイズが50μmでは安定して捉えることは困難です。一般的に、安定して検出するためには、対象物の大きさの少なくとも1/2から1/3程度のボクセルサイズが必要とされます。つまり、50μmのボイドを見たいのであれば、ボクセルサイズを17〜25μm程度に設定するのが一つの目安です。このように、まずゴールとなる検出サイズを定め、そこから必要なボクセルサイズを逆算するアプローチが、効率的な検査計画を立てる上で非常に有効な手段です。

設定の鍵となる幾何学拡大率(FOD・FDD)の調整

目的のボクセルサイズが決まったら、次にそれを実現するための具体的な装置設定を行います。ここで鍵を握るのが「幾何学拡大率」の調整です。前述の通り、ボクセルサイズは検出器の性能と幾何学拡大率によって決まります。実質的には幾何学拡大率を操作してボクセルサイズをコントロールします。拡大率を上げる最も一般的な方法は、X線焦点と検出器の位置を固定した状態で、検査対象の基板や電子部品をX線焦点に近づけることです。対象物を焦点に近づける(FODを小さくする)ほど、検出器に投影される像が大きくなり、結果としてボクセルサイズは小さくなります。このFODとFDDの距離関係を調整することが、狙い通りのボクセルサイズを得るための基本操作となります。

高精細な撮影を行うための注意点

電子部品を高精細に撮影する際には、いくつか注意すべき点があります。まず、使用するX線装置の「焦点サイズ」です。近年の電子部品は非常に微細なため、マイクロフォーカスやナノフォーカスといった極小の焦点を持つX線源が不可欠です。いくらボクセルサイズを小さく設定しても、X線の焦点が大きければ像がぼやけてしまい、意味がありません。また、高倍率での撮影は、基板の反りやわずかな振動も画質に大きく影響します。そのため、適切な治具で基板を固定したり、装置を除振台に設置したりといった対策も重要になります。さらに、拡大率を上げると撮影できる視野は狭くなるため、検査したいBGAやチップが視野からはみ出さないか、事前の確認も忘れてはなりません。

まとめ
検査目的に合わせたボクセルサイズの見極めが重要

ボクセルサイズはCT画質を決定する重要な要素ですが、単に小さくすれば良いわけではありません。高精細な画像が得られるメリットがある一方、ノイズの増加や撮影時間の長期化といったデメリットも存在します。最適なボクセルサイズを設定するには、まず「何をどのくらいの精度で見たいか」という検査目的を明確にすることが不可欠です。検出したい不良の大きさと、許容できる撮影時間やデータ量を考慮し、画質とのバランスを見極めることが、効果的な非破壊検査の鍵となります。

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